チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第一話「その男、不安定につき」

第一話

―――それはとある世界のお話。
幻想世界「ユニバースヴィジョン」に母なる太陽と惑星「アースディア」「アクアディア」が存在していた。そしてそこに住む「大地の民」「水の民」は暗黒神「カオス」によって破滅の道を歩んでいたが、そこへ現れた勇者たちによって防ぐことができ、再び封印することに成功する。
それから7年後。
平和だった世界に新たな魔の手が忍び寄る。それは誰も知るよしもなかった。
そう、一人の男が現れるまでは・・・・・・。


アクアディアのギルド

???「そうか、君が新しいギルド入りたいって人か」
???「……。」
ギルド長の部屋で話をしているようである。
ギルド長「確か、『レオ・ヴィジター』君だったな。君はどこのチームに所属希望なんだね?」
レオ「……。」
レオは相変わらず無言を突き通している。
ギルド長「うーむ…。困ったもんだ。もしかして、悩んでいるのかね?」
レオ「…………。」
表情一つ変わらぬ顔で突っ立っているので空気がずっしり重くなる。
ギルド長「ま、まあ、それもそうだろう。1日猶予を与えるから今日はギルドに泊まっていくといい。君の部屋は……」
モニターらしき物をじーっと見つめると、
ギルド長「チームレジェンドの隣の空室のチーム部屋に行くといい。これが鍵だ。」
そう言われるとレオは鍵を受け取り、部屋を後にした。

彼の名は「レオ・ヴィジター」。無愛想で無口。しかし剣の腕前はピカイチで極めて少ないとされる「魔法両剣士」という職業だ。
「両剣」というのは別名「ダブルセイバー」や「両刃剣」と呼ばれるもので、剣と剣が合体しているような武器だ。しかし、扱うには相応の技術が必要なのであまり普及していない。
彼は一泊する部屋に向かっていた。と、その時。
???「ふんふんふふ〜ん♪」
とても楽しそうに鼻歌を歌いながら一人の女性が廊下を曲がってきた。
???「…あれっ、君は……?」
レオ「…。」
???「もしかして今日来るって言ってたレオって人かな?」
レオは頷いた。
ユウナ「私は『ユウナ・エルヴィン』。レジェンドのサブリーダーよ。」
レオ「…。」
ユウナ「…あんまり他人とお話したことないの?」
レオ「…。」
少し間を置いてから、こう言った。
レオ「うるさい。余計なお世話だ。」
ユウナ「でも、馴染めないと困るし…。」
レオ「もうお前と話すことなんか、ない。」
そう言ってすたすたと行ってしまった。その後ろ姿を見て彼女は、
ユウナ(何か、放っておけないな……。)
と思いつつ、その場を後にした。

夕ご飯時。レオはなるだけ皆と離れるように距離に座っていた。すると、
ユウナ「隣、座るね。」
レオは彼女をみて、ああ、またこの女か、と心の中で愚痴を言った。でも、そんなこと言えないので食べ続けた。
ユウナ「ねぇ、突然だけどさ、お友達って居ないの?」
レオは凄く不機嫌そうな顔をした。
ユウナ「寂しくないの?お友達と居るとすごく楽しいよ?」
レオ「……友達なんか要らない。」
ユウナ「……。」
彼女は凄く困った顔をしている。それから間を置いたあと、
ユウナ「何か、凄く悲しい人だな、レオって」
レオ「……え?」
悲しそうな顔をしながら彼女は食堂から去っていった。
レオ「…………。」
彼は思った。俺のために悲しそうな顔になるのか、と。彼は知らないのだ。誰かに心配されることを。

その夜。みんなが寝静まった頃。レオはテラスに居た。綺麗な満月の光がレオを照らす。
レオ「……。」
レオには、ずっと悩み続けていたことがあった。
誰もが持つ「心」という存在。持っていて当たり前の物。
喜んだり笑ったり。人のために泣いたり、怒ったり。レオにはそれが分からない。心を閉ざし続けた彼は心そのものがない。
知りたい。心を持ってみたい。心が欲しい。だが、あの人は心などもている自体可笑しい。所詮ただのお飾りだ、だから人間はすぐ感情的になるのだ、と…。
もはや、かなわない夢だと信じてきた。でも、捨てきれない。しかし、心を持とうとすると制御のための首元にある張り付いている石が彼を苦しめる。
レオ「うっ……。」
なんとか苦しみを堪え、考えたこと全て振り払おうとした。
ユウナ「どうしたの?眠れないの?」
後ろから声がした。
レオ「…!」
ユウナ「ごめん。驚かせちゃったな。」
そう言うと月を見上げた。
ユウナ「綺麗だなー、満月って・・・。」
レオ「……。」
ユウナ「ねぇ、レオ。いっつも一人なの?」
レオ「…ああ」
ユウナ「寂しくない?」
レオ「…ああ」
ユウナ「嘘」
レオ「……!」
レオは嘘をついたことを見抜かれて動揺した。
ユウナ「羨ましかったんでしょ?友達がいる人のことを。」
レオ「……。」
レオは慌てて首を降った。しかも、悲しそうな顔をしながら。
ユウナ「凄く悲しそうな顔をしてるよ」
レオ「…違う。本当に、悲しく、なん、か……」
泣きそうになり堪えたが、声が震えていた。
レオ「…もう、構わないで……。」
ユウナ「どうして?」
レオ「…そっちこそ、なぜ、俺に構うんだ……」
ユウナ「心配だから、だよ」
レオ「…心配?」
ユウナ「私、貴方のこと、凄く気になるし、何だか助けを求めている気がしてならないんだ」
レオ「……!!」
レオは堪えきれず涙を流していた。
ユウナ「私、決めた。」
レオ「……!?」
ユウナはひしとレオに抱きついた。
ユウナ「私、レオが幸せになれるように頑張るよ、だから……友達に…なろう?」
レオ「ユウ、ナ……。」
レオは産まれて初めて人の暖かさに触れた。
レオ(何て暖かいんだろう……これが、温もり?)
不思議なことに、あの石の制御反応が出ていなかった。なぜかは分からなかったが。
あまりにもの心地よさに思わずぎゅっと抱きしめていた。
ユウナ「ふふっ、やっぱり寂しかったんじゃない。」
レオ「あ……お、俺は……」
ユウナ「今日はもう遅いし、寝るね。おやすみなさい♪」
レオ「……。」
ユウナはテラスを出ていった。しかし、数分の間動けなかった。
レオ「…なんでドキドキしたんだろうか……どうして……?」
彼はこのときから同時に恋をしていたのであった・・・・・・。
                            つづく


後記
なんか、1話からとんでもないことになっているような……気のせいだね。多分。てなことで、次回をお楽しみに!

この小説は「マスター★ランディー」の提供でお送りしています(殴