チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第五話「偽りの愛と真実」

第五話

あれから2人は嵐が去ったあと、レオは雷のせいでほぼ放心状態になったマスターを抱えながらギルドへ戻ってきた。
ユウナ「レオ!心配し……その子は?」
レオ「…一緒に雨宿りしていた」
マスター「……。」
マスターは放心状態のため、何も言えなかった。
ユウナ「と、とりあえず、医務室まで運びましょ」


医務室
ユウナ「そうだったの。怖かったよね。」
マスター「うん。本当に怖かったんよ…。」
レオは、あの時の不思議な感じを思い出していた。
レオ(あの時の感じ……確かに俺そのものを感じた……あの子は一体、何者なんだ……?)
ユウナ「レオ!!」
ユウナの声により、我に帰った。
レオ「……そういえば、何故あんなところに……」
後ろの方でガチャリとドアの開く音がした。
?「ここに居たのか!」
銀色のツンツンした頭に鎧のような服を着た男が現れた。すると突然、マスターが震え出した。
ユウナ「貴方……やっぱりまだ私のこと…ん?マスター??」
マスター「…嫌……こないで……」
?「急に居なくなったから心配し……」
マスター「いやぁぁぁぁぁっ!!」
叫び出すマスター。危険を察したのか、レオが男の前に出る。
レオ「何者だ」
ディン「俺の名は『ディン・ドラグレイド』マスターは俺の」
マスター「違うっ!!」
涙ぐみながら言う。
マスター「暴行事件は知ってるよね」
ユウナ「ああ、あの記事のことね」
ユウナはその新聞を持って来て読み上げた。

今から一週間前、とある名門に事件が起きた。
「少女暴行事件 名門に起きた悲劇
ドラゴンを巧みに操れることで有名な名門ドラグレイド家の息子、ディン容疑者は先日未明、警察が『少女がディン容疑者に暴行されている』との通報を受けました。調べによりますと、目撃者の小間使いのAさんによると突然悲鳴のような声が聞こえ、慌てて駆けつけたところ少女が裸のまま自分の服らしきものを持って外へ逃げ出した模様。その少女はいまだ行方知らずとのことで懸命の搜索が続いています……。」

すると、マスターの口からとんでもない事実が明かされた。
マスター「…その少女、あたしなんや」
レオ&ユウナ「……!?」
マスターは怯えきっていた。目には生気さえ宿っていない。
マスター「ただ、『愛してる』の連呼ばっかりで、私を…………あの時の感覚、忘れようと、したのに……それなのに、また蘇らせるように私の目の前に堂々と出てくるなんて……」
ディン「でも!俺は本当に愛し―――」
マスター「やめてよぉ!!」
耳を防ぎ、泣きわめく。
マスター「言ったでしょ。私は遠い、遠い所に好きな人が居るんやって。なのに!あんたは!それさえも塗り替えようとした。無理矢理!」
ディン「……。」
彼は黙っていた。
マスター「……怖いよ。男そのものが。好きな子まで怖くなっちゃうよ……。」
レオ「……。」
ユウナ「…帰って。お願い。」
ディンは何も言わず、くるっと背を向けると部屋を出ていった。
レオ「……大丈夫?」
レオがマスターの肩に触れた。と、同時にマスターの体がビクッとした。
マスター「…私は汚されたんや。好きじゃない、ただ、欲情した人間に……。」
数分の沈黙のあと、レオがぼそっと言った。
レオ「…愛って、一歩間違えたらその人が傷つくんだな……。」
ユウナ「レオ……。」
マスターがポッケの中をゴソゴソし、ひとつのペンダントを出し、開いた。どうやら、写真が入れられるようになっているらしい。
マスター「これ……私の好きな人なんよ」
ニコニコしているマスターの傍らに一人の男の子が一緒に肩を組んで写っている。
真紅とも言えるような真っ赤に染まったショートヘアーに綺麗な
エメラルド色の目。この子こそがマスターの密かに思っている子なのだ。
ユウナ「可愛い男の子ね。名前は?」
マスター「真斗(まこと)……凱亜 真斗(がいあ まこと)って言うんだ。孤児院育ちだったけど、うちに義理の弟として引き取ったんよ」
ユウナ「じゃあ、いつもマコトくんと一緒だったんだ?」
マスター「うん。引き取った5才の頃からずっと一緒。寝る時も、ご飯の時も、お風呂にしても一緒だった。」
ユウナ「じゃあ、大きくなった、今もしてたってこと?」
マスター「……う、うん」
マスターは赤らめながら頷いた。
ユウナ「いいなぁ〜私も好きな人と水入らずの関係に憧れるなぁ。」
当然のことながらレオもそう思っていた。
レオ(…いいな。そういう関係って。……でも、それはただ、ずっと居て欲しいだけだって、言われてた。愛とか、関係ないって……。)
レオはユウナに質問した。
レオ「ユウナ。好きな人と一緒にいれるって……人として幸せなの?」
ユウナ「ええっとぉ……」
マスター「うん、幸せやよ。」
マスターは優しく語りかけた。
マスター「ずっと、恋って私には縁の無いもんやと思ってた。けどな、マコトと言う恋人が出来てから、考え方が変わった。こんな私にも、出来るんやなって……。」
レオ「……俺…。」
マスター「ん?」
レオ「…俺にも……幸せはやってくるのかな……。」
ユウナ「……。」
レオ「…幸せっていうのを知らない。ずっと無縁だと言い聞かされてきた。ただ、無縁だって…………無縁、じゃないよね。俺も、欲しい。人としての幸せ。人としての喜び。人としての―――」
とその時!!
レオ「うぐっ、ああ……」
ユウナ「レ、レオ!?」
マスター「……。」
レオの首元に張り付いた宝石のような物から拒絶反応らしきものが黒く光っていた。
レオ「……ごめ…さ…い……」
ユウナ「?」
レオ「…言うことに…背く…事…け、けど・・・・・・!間違ってる!!」
すると、マスターがゆっくりとレオに近づく。そして、手をかざした。
マスター「うん。間違ってる。」
ユウナ「マスター……?」
マスター「心を閉ざすなんて、間違ってる。どんな理由にしても、そんな事しちゃいけないよ。人間は喜び、悲しみ、怒り、泣き……感情を持っている生き物なんだ。それは生き物を殺すことと同じじゃないか…………。」
そう言うとかざした手から光を放った。
レオ「うう……き、君は……『インフィニティ』……?」
ユウナ「えっ!?あ、あの、神様だけがもっていると言われている、あの!?」
レオ「そうか……君は……『俺』なのか……。いや、君から見て、俺は『もう一人の自分』…。だから、俺と同じ波動を…持って…いたのか……。」
マスター「……やっと、会えた。もう一人の…あたし」


五話終了。次回をお楽しみに